2025/09/18 17:29
リモージュ焼とは?
フランス中部に位置するリモージュ地方は、18世紀末から磁器の一大産地として知られるようになりました。
きっかけは1768年、この地で磁器に欠かせない「カオリン(白色粘土)」が発見されたこと。
これにより、フランスでも中国磁器やマイセンに並ぶ高品質な磁器の生産が可能となり、王侯貴族や上流階級を魅了してきました。
「リモージュ焼」とは、この地方で作られた磁器の総称。
真っ白で透き通るような白磁、繊細な絵付け、そして華やかな金彩やレリーフなどが特徴で、フランス磁器を代表する存在となっています。
アビランド窯の誕生
そんなリモージュ焼の名を世界に広めたのが、アビランド(Haviland)です。
創業者のデヴィッド・アビランドはアメリカ出身の実業家。
19世紀半ば、パリで評判のリモージュ磁器に惚れ込み、自らフランス・リモージュに渡って工房を設立しました。
当時の磁器産業は分業制が一般的で、白磁を焼く工房と絵付け工房が分かれていました。
しかしアビランドは一貫生産体制を導入し、デザインから焼成、装飾までを自社で行う仕組みを築き上げます。
これによって品質は安定し、芸術性と実用性を兼ね備えた磁器を次々と生み出しました。
さらにアビランドは、当時の流行や美術動向を積極的に取り入れ、
アール・ヌーヴォーやアール・デコのデザインを取り入れた器を発表。
その革新性と美しさから、ヨーロッパだけでなくアメリカの上流階級にも広く愛され、
ついにはホワイトハウスの公式晩餐会で用いられるほどの名声を得ました。
アビランドの魅力 ― 可憐さと優雅さ
アビランドの器には、フランスらしい可憐さと繊細さが宿っています。
白磁の柔らかな透明感に、小花やリース、ガーランドといった上品なモチーフが描かれ、
日常の食卓に「小さな華やぎ」を添えてくれるのです。
今回ご紹介するカップ&ソーサーもそのひとつ。
リースのように連なる小花模様と淡いグリーンのガーランド、
そしてカップに施された波打つレリーフが、光を受けて陰影を生み出し、
手に取るたびに表情を変える美しさを見せてくれます。
リモージュ焼が愛され続ける理由
リモージュ焼は単なる「高級磁器」ではありません。
長い歴史の中で芸術性と実用性を磨き上げ、
特別な日の晩餐から日常のティータイムまで、幅広いシーンで愛されてきました。
その理由は、透き通るような白磁の美しさに加えて、
丈夫で使いやすいという実用性にあります。
華やかでありながら生活に馴染む――
それこそが、リモージュ焼が今なお世界中の人々を魅了してやまない理由です。
暮らしに、フランスの優雅さを
アビランドのカップ&ソーサーを手に取ると、
そこには150年以上続くリモージュ焼の歴史と、
フランス職人たちの美意識が凝縮されています。
コレクションとして飾るのもよし、
日常のティータイムでそっと使うのもよし。
そのどちらでも、暮らしに小さな贅沢と優雅さをもたらしてくれるでしょう。
アビランド リモージュ。
それは単なる器ではなく、フランス磁器の文化と物語を今に伝える「芸術品」なのです。